TOPICSお知らせ

2019.11.29

リュック・フェラーリの「大いなるリハーサル」

2019ferrari.jpg

映画上映:ヴァレーズとシュトックハウゼン
講演:椎名亮輔
上映:2019 年 12 月 2 日(月)16:30 ~ 18:30
講演:18:30 ~ 19:30
会場:武蔵野美術大学 12 号館 1F ビデオアトリエ

リュック・フェラーリはフランスを代表する電子音響系の作曲家で、2005 年に逝去しました。リュック・フェラーリ生誕 90 周年記念企画として、 フェラーリがジェラール・パトリス監督とともに制作した、ヨーロッパの作曲家・音楽教育者たちの鮮烈な姿を記録した傑作ドキュメンタリー 〈大いなるリハーサル〉(Les Grandes Répétitions, 1965-68)シリーズから 2 本、『ヴァレーズ礼賛』と『シュトックハウゼンの瞬間(モメンテ)』 を日本語字幕付きで参考上映します。今回の課外講座では、椎名亮輔先生(同志社女子大学教授、音楽学者、ピアニスト、リュックフェラーリ・プレスク・リヤン協会日本支局長)がこれらの映像作品についての講演を行います。

『ヴァレーズ礼賛』
Hommage à Varèse
1966年/60分/モノクロ

勃興期の電子音響の分野に多大なる影響を与えた作曲家エドガー・ ヴァレーズ。本篇は「エドガー・ヴァレーズ篇」として構想され ながら、ヴァレーズが撮影直前に急逝したために、作曲家、芸術家に よる追悼インタビューと「電離」(シモノヴィッチ指揮)「砂漠」 (マデルナ指揮)の演奏を下に構成された。二人の指揮法の対比も 見応え十分だが、パリのフェラーリが N.Y のデュシャンと国際 電話で会話するシーンはもはや伝説ともいえる映像である。また、 1954 年のリュック・フェラーリの初めての渡米の目的は、フランス を去り、アメリカに渡ったヴァレーズに面会することであった。

『シュトックハウゼンの「モメンテ」』
Momente, de Karlheinz Stockhausen
1966年/45分/モノクロ

その風貌とクセの強すぎる性格からか、作品よりも彼自身について 語られることの多い感があるドイツの作曲家、カールハインツ・ シュトックハウゼン。自身の作品演奏について非常に厳格かつ、 独特なセオリーを持つ一方で、その教育法はシンプルに透徹なもの ともいえる。 本篇はシュトックハウゼンのそのカリスマティックな魅力を存分に 体感できるケルンでの 1965 年版「モメンテ」の指揮、解説と ともに、彼が作曲家に至った道程を自身で語る、後世に残る貴重な 資料となっている。また、今回上映の4本の中では唯一、 シュトックハウゼンがフェラーリと同年代の作曲家である。

リュック・フェラーリ(Luc Ferrari)
1929 年パリに生まれる。コルトー、オネゲル、メシアンに師事。P・シェフェールらとフランス国立放送内で GRM の創設に加わった後、1972 年に自身のスタジオを設立。1982 年には政府の援助を得て "La Muse en Circuit" (「回路の詩神」協会 ) を設立するが後に離れ、1996 年、仕事場となる" アトリエ・ポスト・ビリッヒ" を立ち上げる。2005 年、イタリアで旅行中に客死。ジャンルにとらわれることのない自由さと、エレガントであり、かつ時折みせる諧謔味ある彼の作曲作品は、今なお多数のファンを獲得し続けている。

椎名亮輔(しいな・りょうすけ)
1960 年東京に生まれる。東京大学大学院博士課程満期退学。ニース大学文学部哲学科博士課程修了。同志社女子大学教授。著書に『音楽的時間の変容』(現代思潮新社)、 『狂気の西洋音楽史』(岩波書店)、『デオダ・ド・セヴラック』(アルテスパブリッシング、第 21 回吉田秀和賞受賞)、主要訳書に、マイケル・ナイマン『実験音楽』(水声社)、 ジャクリーヌ・コー『リュック・フェラーリとほとんど何もない』(現代思潮新社)などがある。プレスク・リヤン協会日本支局長。

プレスク・リヤン協会

2006 年にリュック・フェラーリ夫人であるブリュンヒルド・フェラーリにより設立。フェラーリの仕事に関係する一切の事象を取り扱い、彼の遺した資料のアーカイブ化、 体系化を行っている。またフェラーリの録音アーカイブを使用した国際コンクール "Prix Presque Rien" ( プレスク・リヤン賞 ) を隔年開催するなど、精力的に活動している。 また 2013 年には日本支局が正式に発足し、日本語での情報を発信している。

企画:映像学科 クリストフ・シャルル