WORKS学生作品

2020.08.14

2020年 メディアアート1(3年次実技)中間発表:"new normal"

武蔵野美術大学 映像学科 2020年 メディアアート1(3年次実技)中間発表:"new normal"

Musashino Art University - Dept.. of Imaging Arts and Sciences 

担当教員:Christophe Charles(クリストフ・シャルル) 


https://youtu.be/2Nb5CBUm3Dc


「ニューノーマル」について

「ノーマル」は英語的発音で、その語源はラテン語の「ノルマ」:セットスクエア、定規。

それに伴って「標準」、「平均的な状態」を示す。

「従うべきルール」と見なされ、判断・行動の基準・原則にもなる。

パンデミックによって「新しい」基準は生まれるのか?

その基準によって人間はそれまでの行動を変えるのか?

そのような「基準」は本当に存在しているのか?


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1

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ロ・カダイ Lu Jiadai

「空白」


新旧交代にはルールとか存在していない。いつの間にか見慣れた私たちの日常が何らかの理由で突然変われるかもしれない。そういう変化も時間の流れによって新しい生活に変わって行く。私に対して、コロナの影響によって、住んでいる町がほぼ半年間ロックダウンされていた。車の窓から何もない、誰もいない町を眺めて、私にとっての『新しい日常』でも言えるべきではないかと思う。


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2

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市堰楓子 Ichiseki Fuko


新しくなる前は古かったりするわけで、その枠組みがなければ一つの流れである。

ニューノーマルは定義される前から存在していて、時間的枠組みを表明されたことによって認識された概念であると私は考えている。投げる(音)、痕跡(無音の音)のフレームを備える「少年の壁打ち」はこの概念と酷似し、また、時間やテキストなどの枠組みという点で、「無音音楽」ともその構造はよく似ている。

枠組みの意識が私たちに新しい日常をもたらすのである。


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3

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谷口 遥奏 Taniguchi Haruka

「触れる」


気がつけば、今まで何気なくできていた触れるという行為を恐れるようになっていた。

触ることができる。それは思っていたよりも重要なことだったようだ。たったそれだけで、世界をぐっと近くに感じることができていた。

私のnew normalは、近づけなくなった世界に触れることだ。


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4

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イ・ジェウォン Lee Jaewon

「Lamron Wen」


いつの間にか新たな日常が浸食してくる。気付くのが遅いいつもの私。崩れていく心と体を押さえて苦しみもがいても無駄。それでもちょっとずつ痛みに耐える喜びを覚える。慣れてしまった自分をふっと見ると、なぜか神経質になってしまう。強迫的な私は下に下に沈殿していく。そう、沈殿物になる前に、窒息する前に、この新しい日常と共にひとつの腫れ物になろう。


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5

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チョウ・シュンガイ 張 竣凱

「FLY」


蝿の反応速度は1/50秒、人間より12倍速い。つまり、彼らが感じられる時間の流れも遅いことを意味しています、スローテンポで流れる映像のようです。

本映像は一匹の蝿の行動軌跡を手がかりにする、蝿の視点を使って,映像を感知するのプロセスを延長し、この世界をもう一度観察して、マジックリアリズム主義の叙事手法を通じて、今世界の「New Normal」を表現します。


A fly's reaction time can get to 50 milliseconds, which is 12 times faster than that of human's. Therefore, their sense of time is much slower, like a film played in slow motion. 

This video follows a fly's trail. Through the perspective of a fly, the film extends the time it takes for one to process image. The fly's perception also allows one to view the world in a different perspective, conveying the "New Normal" through Magic Realism.


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6

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横場 優里 Yokoba Yuri


新しい日常が訪れるといより、これはあるべき姿への正常化とシンプル思考である。

自粛中私は不必要なものが部屋に溢れていることに気づいた。消費のあり方は必要なものだけを、大切に使うという当たり前のものに変ってきている。流行や便利さなどの追求を削ぎ落とすとどれくらい不必要なものがあるだろう。様々な概念を剥いだときこの世界はきっと海、地球は水の惑星になる。海の音を丁寧に聞いてみよう。無駄のないものだけでどれほどのものが生まれるのか。そこにいくつもの旋律があるのに気づく。


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7

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萩原 小百合 Hagihara Sayuri


New nomalなんかに関わらず、私は本を読むのですが、何かあった時でも手に入るものは古いものだなと思いました。また、前見えていた青空が見えなくなるような、日常が変わるようなことがあっても、寄り添ってくれるのは役に立つかなどとはかけ離れた先人の言葉なのだと。媒体を変えながら、青空の化石はどこかに残っている。


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8

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加藤 瑠菜 Kato Runa

「花菖蒲」


人がどう在ろうが、毎年起こる事がある。去年と同じように、菖蒲がその花を咲かせていた。

変わったのは、それを見に来る人々のほう。

時期になると人でごった返していた園内は、今、見ごろの菖蒲を前にまばらな人影があるに留まっていた。

これが今は異常に見える。

でも、この先もこうやってゆっくり写真が撮れる状態が続くなら、それこそが「当たり前」になるのではないか。


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9

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酒井 日花 Sakai Nichika

「卵記」


自粛生活が始まって、朝早く起き卵を焼き始めた。

突然の新しい生活に、適応できてしまった自分に対して物足りなさのようなものを感じていた。行動は、自分にもイレギュラーを起こすためだったのではないかと現在は考えている。新しい生活に人々が驚いて困っている。朝、早く起きて卵を焼いてパンと食べる。私のニューノーマルであり、以前の異常である。


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10

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安藤 美由 Ando Miyu

「呼吸」


これは呼吸と気分の関わりについての作品である。

意識しなくてもできていたはずの呼吸が苦しくなった。

呼吸の苦しさと、この気分の重さはどちらが先に来ているのか。

身体と私は一括りではないのかもしれないという疑問が生まれ、それを探るための最初の手段としての作品。


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11

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岩崎 雅 Iwasaki Miyabi


線香花火を現実に見ているときは「映像を見てるみたい」と思うのに、映像の線香花火を見 ているときは実際目の前で線香花火が光っているのを見ているような体験をする。現実に見 ていた風景が、数秒後には本当に存在していたものの記憶なのかわからなくなる。最近は もっぱらこのような不安を拭い去りたくて映像を作りたくなってしまう。 自分の深層が維持したいと願っていて、かつ生命維持には直接関係のあるわけではないノー マル(日常)について、自分の目で見えているものを信用している時のことを考えることで 紐解いていけるかもしれないと考えている。 


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12

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細野 楓果 Hosono Fuka


新しい日常ということで。 まあ最近でいうといろいろ変化したこともあると思うのだけれど個人的にはやはりウィズコロナ というものが印象的で。 今まで生きてきた中で病気とともにどう暮らすかという展開まで持って行かれたことがなかった ためなかなか難しいなと考えさせられる日々が続くのだが、それはそれとして日本人の日常とし て現在はかなり「狼探し」というか、人狼ゲームを日常で行っているような気がする。 誰かがマスクをしていなければ後ろ指をさしてくるし帰省したらお気持ちたっぷりの張り紙が送 られたり。自粛警察といわれるものも最近あったけれど""犯人探し""が日常的に行われている。と いうか多分これは隠れて見えていなかった部分が見えるようになってきたというところなのだろ う。 やること陰湿で本当に最近腹が立っていて、それの印象しか新しい日常というものが思い浮かば なかったのでこちらをの問題をテーマにした。 


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13

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サンティアゴ フェルナンデス Santiago Fernandez 


トイレットペーパーの3Dモデルが流れているたくさんの重ねた会話の音に反応して、形が変わったりします。バックグラウンドには意味不明なニューノーマルと感覚的やプライベート的に関連したいろんな歪んでいる動画が流れています。

自粛期間が始まってから、皆は今年予定していた沢山のことをできなくなり、将来に対する不安の気持ちがさらに増えたと思います。現実自体が停止し、世界が辺獄のようなものになってしまったという感覚を作品にしてみました。


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14

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松尾 駿太朗 Matsuo Shuntarou


新型コロナが感染拡大を続けていた3月、独メルケル首相は入国制限等の措置について、人命のためには仕方ないが一時的なものに留めるべきだと、移動の自由の重要性を強調した。彼女は東独の出身である。

東京オリンピックでも人々の移動と人命が天秤にかけられた結果、延期となった。私たちにとって移動の自由は当然のものとされてきたが、それが再考されるタームにきた。その点において、箱として機能する場所性の希薄な「Tokyo」のこの埋立地に、移動する価値はあるのか。


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15

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前田 明 Maeda Mei 


生気がが失われ血の気がひいていった気がした。同時に普段何気なく見ている赤色が色あせ、つ

いには色を失い意味すらも失った。信号の青と黄色の横にある光はどんな意味を持っているのだ

ろう。鼻の下にあるものはなんなのだろう。気にも止めずに血の気のひいた世界が回っていく。


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16

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前田 征太郎 Maeda Seitaro

「Political play」


所謂Z世代の通年としての無気力さ、それは力無き市民として意思を示す手段を剥奪され、また多くの災害の中での無力さを、制度的な問題と相まって感じ、それを当たり前に生きている事に起因していると考えられる。 その社会通念の様な無力さ、そして極端なリベラルがマジョリティである社会の中で、我々が意思を示す新たな文体が必要である。